願うのは未来を違えないことと、それから、



「・・・ま、こんなとこやろ」

三番隊舎の片隅でひっそりと育てている柿の木を見上げながら、ギンは一人呟いた。

気まぐれでここに柿の木を植えてから何年が経っただろう。
しっかりとした実をつけ始めた頃から作り出してみた干し柿は、なかなか上手に作れるようになっていた。

「今年もええ実がなりそうやなぁ」

きっと自分はその頃にはこの世界にいないけれど。
イヅルか誰かが、彼女に最初で最後の干し柿を与えてくれるだろう。
本当はいつものように作ってあげたかったけど仕方がない。

あの人の計画は既に、最終段階へと近づいているのだから。

「幸せに、なるんやで」

この世界を去ったとき、きっと彼女は悲しむのだろう。
でも、自分を追ってくることだけはしないで欲しい。
そうしたら、きっと殺さなければならないから。

殺したくなんて、ないのだ。

あの日、拾ったときから彼女は大事な存在なのだから。



08.02.27

タイトルは loca より

ただひとりの幸せだけを願って

藍染の反乱の少し前の市丸さん。
好物の干し柿は自分で育てたもので作っているようなので。
乱菊さんのことを想いつつ育ててたのではないかな、と。