When You Wish upon a Star


「雛森、入るぞ」

そう言って、了承を取る前に日番谷は雛森の部屋の障子を開けた。
部屋の主は特に驚いた様子もなく、いつものように笑って出迎えた。

「いらっしゃい、日番谷くん。来てくれてありがとう」
「おまえが来い、って言ったんだろうが。で、見せたいものって何なんだ?」

昼間、雛森はいつものように執務室に書類を届けに来たのだが、
その時日番谷に、見せたいものがあるから仕事が終わったら部屋に来て、と言ったのだ。
見せたいものとは何なのか聞いても、夜になったらとはぐらかされ、
この数時間の間ずっと気になっていたことだった。

「ええとね・・・ちょっと、灯りを消してもらってもいい?」
「・・・・・わかった」

よくわからなかったが、光がない方がいいものなのだろう。
そう思って、少しだけ訝しみながらも日番谷は灯りを消した。

「あのね、見せたかったのってね、これなの」

そう言って、雛森が開けた窓の外。
その空に広がっていたのは満天の星。
尸魂界は元々星がよく見えるのだけど、今日はいつもよりも、
こころなしかたくさんの星が瞬いている気がした。

「ここのところすごく星が綺麗だったから、
日番谷くんと一緒に見たいなぁって思ったの。・・・嫌だったらごめんね」

星明りの元、少しだけ見える雛森の表情は苦笑に近いもので、
日番谷は少しだけ残念な気持ちと、一緒に見たいという言葉に、
喜びを感じる気持ちを抱えながら一言、言った。

「莫迦桃」
「え?」
「別に嫌だなんて一言も言ってねぇだろ」
「そうだけど・・・」

少しだけ驚いたような表情の雛森を横目に、日番谷は再び星空を見た。
昔、潤林安で共に暮らしていた頃見上げていたのと変わらない星空に、
変わってしまったようで、変わっていない自分たちの関係に、思いを馳せながら。

「あ・・・」

隣で日番谷と同じように星空を見上げていた雛森が突然、そんな声を出した。

「どうした?」
「今の見た?流れ星!」

その言葉に雛森から星空へと視線を移すと、そこでは確かに星が流れていた。

「お願い事しなくちゃ!何にしよう・・・ほら、日番谷くんも!」

そう急かされて、星に願うことを考えた。
思いつくことはただ一つ。
隣で一生懸命、星に何かを願っているこの少女が、いつまでも幸せでありますようにと。



08.03.03 (07.03.28 拍手)

星に願うのはただひとつ、君のこと

二人のいた潤林安では星がよく見えていたと思うので、
隊長・副隊長になってもよく星を見てたんじゃないかな、と。