黄昏マジック 


「まだ帰ってなかったのか?」

驚いた、という表情で、教室に戻ってきた日番谷がそう言った。
先に帰っていいと言った相手がまだいたのだから当然なのだろうけど、なんとなく釈然としなくて。
雛森は怒った、という表情をして日番谷を軽く睨んだ。

「だって、久しぶりに一緒に帰れるんだもん。それとも、あたしが待ってちゃ迷惑だった?」
「誰もそんなこと言ってねぇだろ。ほら、さっさと行くぞ」

そう言って、本当にさっさと教室を出て行こうとするので、
雛森は慌てて立ち上がると日番谷に言った。

「もう、少し待ってよ」
「おまえを待ってたら日が暮れちまうだろうが」
「あ、ひどーい。そんなことないもん」
「本当かよ」

そう言って日番谷が軽く笑った。
その笑顔がこの少し薄暗い中では何故だかかっこよく見えてしまって。
雛森は、頬が少し赤くなるのを感じつつ言った。

「本当だもん。それに日が暮れちゃうのはあたしの所為じゃなくて、日番谷くんが遅くなったからでしょ」
「はいはい」
「もう、日番谷くん!」

自分のことになるといつも日番谷はさらりと受け流してしまう。
それがなんだか悔しくて。
雛森は一瞬、掠めるようにキスをした。

「ひな、もり?」

予想外の出来事に驚いたらしい日番谷が雛森の名を呼んだ。
その頬はこの少し薄暗い中でもわかるくらい赤く染まっていて、
きっと自分も同じような顔をしているんだろうなと思いながら、雛森は満足そうに笑った。



08.03.03 (07.03.28 拍手)

憎まれ口を黙らせる方法

学園ラブコメ風味で。
きっとこういうことは日常茶飯事だと思います、うん。

タイトルは 万屋花乱舞 より