相合傘 


「雨かよ・・・」

久しぶりに二人で帰る放課後のこと。
外は小降りではあったが雨が降っていて、傘をささなければ家に着くころにはずぶ濡れになってしまうだろう。
嫌そうに呟いた日番谷に苦笑して、雛森は折り畳み傘を取りだそうと鞄の中を探った。

「・・・あれ?」

いくら探しても折り畳み傘が見つからない。
奥底に入ってしまったのかといくつか教科書を取り出してみても、その姿は見当たらない。

やっちゃった。
昨日の夜見た天気予報では、今日は午後から雨になると確かに言っていたのに、
寝坊したせいですっかり頭から飛んでしまっていた。

「また忘れたのか?」

日番谷の呆れたような言葉に、返す言葉もなく雛森は項垂れた。
この前も似たようなことをやってしまって呆れられたばかりなのに。
同じようなことを繰り返してしまう自分が情けなくなる。

「・・・しゃあねぇな」

そんな言葉とともに、雛森の頭上に傘がかけられた。
藍色のそれは、日番谷のもので。
驚いて日番谷の方を見ると、照れているのか少し赤い横顔が見えた。

「風邪でもひかれると面倒だからな」

憎まれ口に隠された日番谷の優しさが嬉しくて、雛森は微笑んだ。

「日番谷くん、ありがとう」
「別に。・・・行くぞ」
「うん!」

たまには、一つの傘に二人で。



06.09.16 (09.12.30 ちょっと改稿)

さりげない優しさ、こぼれた笑顔。

このあと二人してドキドキしながら帰ってるといいな、なんて思いながら(笑)