手を繋いで離さないでずっとこうして 


「・・・・・痛い」

歩くたびにずきん、ずきん、と痛む足で、必死に家までの道を歩きながら、雛森は一人呟いた。
やっぱり、無理せずに保健室に行って湿布を貰えばよかった。
手遅れであるのは百も承知なのだけれど。

「あとちょっとだし・・・頑張らなきゃ」

そう呟いて、いつの間にか立ち止まっていた足を前に出した。
痛みの所為でゆっくりとしか進めないけど、一応家までの距離は短くなっているのだから。

「なーにやってんだよ?」

その時。小さい頃から聞き慣れた声が聞こえた。
その声に雛森は歩くのを再び止め、今度は後ろを振り返った。

「日番谷くん・・・」
「どうしたんだ?足」

心配そうな声色で日番谷が雛森に訊ねた。
捻挫した足で無理に歩いていた姿を見られていたのだろう。
ここで見栄を張っても仕方がないので、雛森は正直にこうなった経緯を話した。

「・・・今日の体育、マラソンだったんだけど、その時に捻っちゃったみたいで・・・」
「ちゃんと冷やしたのか?」
「ううん、まだ・・・。家に帰ってからでも平気かな、って」
「莫迦」

一言で切って捨てられた。
普段だったら怒っているところだけど、今回は全面的に自分が悪い。
そうわかっていたので、黙るしかなかった。

「ほら」

その声に、俯いていた顔をあげると、日番谷が手を差し出していた。

「え?」
「どうせ、そのまま歩くのはきついんだろ。家までもうそんなねぇんだから、とりあえずつかまってろ」
「うん!」

日番谷の何気ない優しさが嬉しくて、雛森は笑顔でそう言うとしっかりと日番谷の手を握った。

こうやって手を繋ぐのは何年ぶりのことだろう。
小さい頃はよく繋いだりしていたけれど、成長するにつれて次第にしなくなっていった。

その証拠に久しぶりに繋いだ手は、雛森の記憶に残るそれよりも大きくて。
なんだか少しだけ鼓動が早くなるのを感じた。


ずっとこうしていたいな。


日番谷の手をしっかりと握りしめながら、そんなことを思った。



07.01.01

繋いだ手、高鳴る鼓動。

こういう時、日番谷は我慢してたことは怒るんだけど、
何だかんだいって優しいんだろうな、と。

タイトルは moonlight より