テキスト139ページの冒険 


昼下がりの教室。
心地よい陽射しについ眠気を誘われるが、それを打ち払うかのように、
日番谷はぱらぱらと教科書のページをめくっていた。
その行動にたいした理由はなく、ただなんとなくめくっていた手が、あるページを見て止まった。

「あいつ・・・」

ページの片隅にひっそりと描かれていたのは、前に彼女が好きだと言っていたウサギの絵で。
たぶん、このあいだ貸した時に書かれたのだろう。
勝手に落書きをされていたことにほんの微かな苛立ちを覚えながら、
机の上に転がっていた消しゴムでその絵を消した。

他に書かれたものはないかと日番谷は再び、けれど先程より少しゆっくりと、
教科書のページをめくった。

そして。

めくっていた手が再び、止まった。
139、そう印刷されたページ番号のすぐ上に書いてあったのは、
今度は絵でなく文字で。たった一言。





”大好き”






まぎれもない彼女の字でそう書いてあった。
もしも何か書いてあったら消そうと持っていた消しゴムが、ぽろりと手から転げ落ちた。

「莫迦野郎・・・・」

思わず頬だけでなく耳まで赤くなってしまったことを、誰が責められるだろう。
三つの文字をじっと見つめながら、席が一番後ろであったことを感謝した。



07.06.26

彼女の名残に、高鳴る鼓動

ウサギ=チャッピーで。好きそうだなーと。

タイトルは moonlight より