あまいおはなし 


当番の掃除を終え、さっさと帰ろうと机の上に置いておいた鞄を掴もうとしたそのとき、
背後から声をかけられ日番谷は面倒くさげに振り返った。

「冬獅郎くん、ごめんね邪魔して」
「・・・井上か。いや、別に平気だ。どうした?」
「雛森さん、知ってる?一緒に帰ろうと思ったら教室にいなくて」

そう言うと、織姫は視線を教室の二つある入り口に彷徨わせた。
どうやら、雛森を探しているらしい。
今朝聞いたことを思い出しながら、日番谷は答えた。

「あーあいつなら、今日は用事あるから、早めに帰るとか言ってたぜ」
「そうなんだぁ、残念。せっかくおいしいクレープ屋さん見つけたのに」
「・・・女って、何でそんなに甘いモノが好きなんだ?」

日番谷は、どちらかと言えば甘いモノは苦手だが、幼なじみである雛森はその反対に甘いモノが好きで、
チョコレートやキャンディーを食べるときは、至福の時なのだと言っていたような覚えがある。
雛森といい、井上といい、一体何故そんなに甘いモノが好きなのだろう。

「なんでって言われたら・・やっぱり、おいしいし、幸せな気分になれるからじゃないかなぁ」
「幸せな気分になれる、ねぇ・・・」

そういえば、雛森も甘いモノを食べるときはいつも、嬉しそうな表情をしている気がする。
あれは、やっぱり、幸せだからなのだろうか。
そんな日番谷を見て、織姫はふふと笑うと、名案とばかりに一つの提案をしてきた。

「だったら冬獅郎くん、一緒にクレープ食べに行かない?」
「は?何でだよ」
「だって、冬獅郎くんにもおいしいもの食べて幸せになって欲しいもん。
それに、一人で行っても楽しくないしね。行こう!」
「・・・他のヤツがいんだろ。朽木とか有沢とか」
「朽木さんはお家の方で大切な用事があるんだって。たつきちゃんは部活なの。ね、お願い!」

両手を合わせて、頼まれてしまったら、嫌とも言えず。
渋々、了承の旨を言うと、ほっとした表情で織姫が笑った。

「ありがとう!やっぱり、冬獅郎くんは優しいね」
「そら、どーも。行くぞ」
「うん!」

にっこりと嬉しそうに笑う織姫を横目で見ながら、
日番谷は今度こそ鞄をしっかりと掴み、さっさと歩きだした。



08.03.11

甘いモノは幸せの源。

たまには日雛関係なく。
織姫は日番谷と同じクラスで、雛森とも仲良し。
二人の恋を影ながら応援してるんです(笑)