もう少しだけ、このままで


小さい頃からずっと一緒だった。

このまま、ずっと一緒にいられると、無邪気に信じ込んでいた。

でも、そうではないのだと知った瞬間、自分の気持ちに気がついた。



「ね、日番谷くんって好きな人とかいるの?」

半ば興味本位で訊ねてみた問いに、日番谷は眉を顰めて、いつもの仏帳面で嫌そうに答えた。

「・・・さあな」
「あ、あやしい。否定しないってことはいるんだ、好きな人」

彼の答えを聞いて、ちくりと胸が痛んだ。
いなければ、いない、とはっきり否定しているはずだ。
そうではないということは、きっと誰か想っている人がいるのだろう。
少しショックを受けたけど、それを振り払うかのように勢い勇んで訊ねた。

「誰?あたしの知ってる人?」
「さあな。・・・そういうおまえはどうなんだよ」
「あたし?・・いるよ」

本人を目の前にして、好きだなんて告白できる勇気は、今はまだ、ない。
側にいることが当たり前すぎて、気の置けない関係でいるのが当たり前すぎて、
その関係を壊すことを望めない自分がいる。
幼なじみに恋をするなんて、厄介なものだ。

「ふーん」

たいして気にしてない、と言わんばかりな返事。
きっと、彼の目には幼なじみとしてしか映っていないのだろう。
改めてそのことを実感させられた気がした。

「でも、日番谷くんに想われてる人は幸せだね。
日番谷くんってなんだかんだいって優しいし、頼りになるし」

小さな頃から、何かあると助けてくれた。
色々と文句を言うことはあったけど、それでも彼は決して見放そうとはしなかった。
そんな彼の優しさは、きっといつの日にか桃以外の人にささげられるのだろう。
そうなったら、とても悲しいし寂しいけれど、それを拒否することは出来ない。

ただの、幼なじみだから。

決して彼の特別な人、ではないのだから。

それでも、そんな日が来るのが近くない未来であることを、切に願った。



08.03.03

この想いはまだ、心の中で眠らせておく

学園設定の日雛は、両方とも片思い、をベースにしていこうかと。
互いに一喜一憂して、でも思いが伝えられなくて、みたいな。