指先に灯る 



「あれ?」

いつものように日番谷の元に書類を届けに来た雛森が、突然そんな声を出した。
日番谷は何か変な物でもあったのかと思い、書類をめくる手を休めて雛森に問いかけた。

「どうかしたのか?」
「あ、ううん。火鉢があるなぁって思って。ほら、この前来た時にはまだなかったから」

どうやら、訪れたらそれまではなかったものが置いてあったので、
驚いたというだけのことだったらしい。

「ああそれか。松本の奴が本格的に寒くなる前に出すべきだってうるせぇから探し出してきた」
「日番谷くんが?」
「いや、俺じゃなくて竹添とかちょうど手の空いてた奴らにやらせといた」
「そうだったんだ。・・ね、そういえば乱菊さんはどうしたの?」

十番隊の執務室に入って来た時から思っていたけれど、乱菊の姿が見当たらない。
休憩時間も終わって、今は執務中なはずなのに一体どうしたのだろう。
雛森はそう思って、乱菊の行方を知っているであろう日番谷に訊ねた。

「松本なら少し前に書類を届るって出てった。何か用でもあんのか?」
「あ、ううん。ちょっと気になっただけ」

そう言って、雛森は微笑しながら軽く首を横に振った。

「ね、ちょっとあたってってもいい?」
「・・・執務中だろうが」
「ちょっとだけだもん。いい?」
「勝手にしろ」

言外に日番谷のちょっとした優しさを感じて、雛森は微笑した。

「ありがとう、日番谷くん」



06.11.30

タイトルは loca より
仄かに温まったのは指先?それとも・・・

冬も近づくある日の二人の光景。
・・・しかし、尸魂界の暖を取る方法は火鉢でいいのかな。